
今回お話を伺った巴山さんも、株式会社エイチ・アイ・エス(以下、HIS)で20年以上キャリアを積みながら、そんな思いを抱えていた1人でした。HISでは、45歳以上の社員を対象に社内公募で希望者を募り、地域へ出向するプログラムを実施。地域課題の解決に挑戦することで、社員一人ひとりの成長だけでなく、新たな事業や組織の可能性を広げています。巴山さんは、その取組みに参加し、山梨県小菅村へ赴任。外に出たからこそ「自分にできることは、まだたくさんある」と実感したといいます。
・お話を伺った方 :巴山 陽子 さん
・部署/役職 :山梨県 小菅村役場 源流振興課
・勤続年数 :31年目
安定しているのに、答えが出せない世代特有の不安
――これまでのキャリアについて教えてください。
1996年HISに入社し、最初は関西の店舗で海外航空券の手配を担当しました。その後、フリープランのツアー企画や海外航空券の仕入れなどを経験し、関東へ異動。直近ではオンライン予約システムや検索システムの開発・テストにも携わってきました。
――社内公募に応募した当時の心境はいかがでしたか。
当時の仕事は本当に楽しかったです。新しいシステム開発にも関わっていて「最後まで見届けたい」という思いもありました。ただその一方で「このシステムが完成した時、自分はいくつになっているんだろう」「そのあとも、ずっとこのまま同じ仕事を続けていくのかな」と考えることが増えていきました。
また、AIなど新しい技術が次々に出てくる中で、若い世代の吸収力の速さを感じる場面も多く、「自分はついていけるのか」という不安もありました。安定しているけれど、このままでいいのか分からない。そんなモヤモヤを抱えていました。
同世代の同僚とご飯に行くと、最終的には「このままでいいのかな」という話になるんです。大きな不満はない。でも、この先どうするのかは誰も答えを持っていない。そんな状態でした。

「最後のチャンスかもしれない」45歳からの挑戦
――社内公募プログラムに申し込みをしたきっかけを教えてください。
”45歳以上限定”という条件が大きかったですね。通常、このような挑戦の機会って若い世代が優先されることが多いと思うんです。でも今回は、自分たち世代に向けて会社が機会を作ってくれた。それがすごく嬉しかったですし、「最後のチャンスかもしれない」と思いました。転職してゼロから挑戦するのではなく、会社に籍を置いたまま新しい挑戦ができる。これは本当にありがたい制度だと思いました。
また、トレイルランニングが趣味で、募集されていた山梨県小菅村にも行ったことがあり「いいところだな」と思っていました。募集先に小菅村があったことは大きな後押しになりました。
――応募する際に、不安はありましたか。
正直、不安の方が大きかったです。観光付きのツアーを企画した経験もなかったですし、「自分にできるのか」という気持ちはありました。ただ同時に「ダメ元でも、まずは応募してみよう」という気持ちもありました。会社に所属しながら挑戦できる。その安心感は大きかったですね。望まない異動をするくらいなら、自分で選びたいという気持ちもありました。

「やれることは何でもやる」新しい仕事の面白さ
――山梨県小菅村では、どのようなお仕事をされていますか。
小菅村役場の源流振興課に所属して、観光振興や地域活性化に関わっています。イベント企画をしたり、VTuberさんとのコラボを企画したり、本当に”何でもやってみる”という感じですね。
――小菅村で働いて、驚いたことはありますか。
最初は戸惑うことばかりでした。例えば、回覧板で情報が回ってくるんです。紙で順番に回していく文化で、都心で働いていた時とは全く違う環境でしたね。役場の中でも「誰に何を相談すればいいのか」がわからず、まずは「この人がキーパーソンかな」と探しながら関係性を築いていきました。
民間企業と違って、行政は利益だけで判断できるわけではありません。さまざまな立場の方のことを考えながら進める必要があり、その難しさを感じました。そのおかげで、俯瞰して物事を見られるようになりましたし、客観的に考える機会が増えましたね。

積み上げてきたものは、環境が変わってもなくならない
――印象的だった取り組みはありますか。
わさびを植える体験ツアーですね。所有者の高齢化にともない使われなくなったわさび畑を活用できないかという話があり、「せっかくなら村外の人も呼んで体験イベントにしてみよう」と提案して実現しました。キャンセル待ちも出るほどすぐに予約が埋まり、当日もすごく盛り上がって、参加者アンケートでは「小菅村で農業に関わってみたい」という声もいただきました。ただイベントをやるだけではなく、村との関係人口づくりにもつながったのかなと思っています。
――小菅村での仕事を通じて、新たな気づきはありましたか。
1番大きいのは、「これまでの経験はちゃんと活きる」と実感できたことです。システム開発では、様々な部署と調整したり、マニュアルを作成したりするなど、横断的にコミュニケーションを取る機会が多かったんです。そうした経験が、地域の方々と仕事を進める中でもそのまま役立っています。また、原価管理の業務に携わっていたこともあり、「限られた予算の中でどう実現するか」を考える力は自然と身についていたように思います。
以前は、「積み上げてきた仕事をやめたらキャリアは終わるのではないか」と思っていました。でも実際には違いました。環境が変わっても、自分の中に積み上がっているものはちゃんと残っているんだと実感しました。むしろ、違う環境に行ったことで、「自分にはこういうこともできるんだ」と気づけました。


わさびを植える体験ツアーの様子
外に出たからこそ見えた「HISって、いい会社だったんだ」
――周りから実際にかけられた言葉があれば教えてください。
「楽しそうだね」「表情が柔らかくなった」と言われることが多いですね。自分でも楽しいと感じながら働いています。決して前の仕事が不満だったわけではないのですが、今は、自分で考えて動いて、目の前の人から直接反応をもらえる。そのやりがいがすごく大きいです。
以前はお客様との距離が遠い部署だったので、感謝の声をいただく機会が少なかったんです。でも今は、「ありがとう」と直接言っていただける。それで、入社当時に店舗でお客様対応をしていた頃を思い出しました。「あ、自分ってこういう仕事が好きだったんだな」って。
――会社の見方にも変化はありましたか。
外に出てみて、「HISって意外としっかりとした会社だったんだな」と思いました(笑)。
昔のベンチャー気質のイメージをずっと持っていたんですけど、赴任時のサポートや社内フォローもすごく丁寧で。一度離れて客観的に見たことで、会社のありがたさや強みがわかりました。
また、地域の方から「HISって有名ですよね」と言われることも多くて。社内にいる時はベンチャー企業の時の気持ちのままずっと「まだまだだ」と思っていたので、外から見た会社の価値にも気づかされました。

”自分が動かす”ことがやりがいに
――働き方の意識にも変化はありましたか。
ありますね。以前は大きな組織の中の一人と感じることもありました。でも今は、人数が少ない分、「自分が動かなければ何も始まらない」という感覚があります。やらされている仕事ではなく、自分で考えて動いて、目の前の人から直接反応をもらえる。その分、責任も大きいですが、それ以上にやりがいを感じています。
――今後のキャリアについて、どのように考えていますか。
正直、具体的な形はまだわかりません。でも、「その時にできることを柔軟にやっていきたい」と思えるようになりました。漠然とした不安な気持ちから「環境が変わっても、何とかやっていけるかもしれない」という自信がついたと思います。心身が健康なら、案外どうにかなるのかもしれないなって。将来的には、小菅村以外の地域でも挑戦できたらいいなと思っています。自分がやったことを村で引き継いでくれる人ができたら、それが1番嬉しいですね。
――最後に、同世代の方へメッセージをお願いします。
40代後半って、会社員人生の終わりが少し見えてくる世代だと思うんです。大きな不満はない。でも、「このままでいいのかな」と感じる人は多いと思います。私自身、最初はすごく不安でした。でも、一歩踏み出してみて本当によかった。だから、もし少しでも挑戦したい気持ちがあるなら、「勇気を出してみてもいいんじゃないかな」「なんとかなりますよ」と伝えたいです。
※サービス内容やお話を伺った方のご担当部署・役職などの情報はインタビュー当時のものとなり、現在とは異なる場合がございます。

| 社名 | 株式会社エイチ・アイ・エス |
|---|---|
| 業種 | 旅行業等 |
| 従業員数 | 連結10,000名以上 |



